やっちゃった!インシデント後の立ち直り方で、看護師力が養われる
[著者: 東奈津子 (看護師 /社会保険福祉士).more..]
看護師の仕事は患者さんの身体・生命と直結しているとわかっていても、人為的な医療事故を100%ふせぐことは難しいでしょう。
ベテランの看護師であっても、ヒヤリハットやインシデント事故を起こす可能性はあります。
しかしインシデントを起こしてしまったあとの立ち直り方しだいで、看護師の能力が、より大きく花開くこともあります。
そこで、インシデント後の上手な立ち直り方を検証してみました。
防げないヒューマンエラーの中、少しでもインシデントを減らす方法
まず頭に入れておきたいことは、看護師のヒューマンエラーによるインシデント・アクシデントは完全に防止することは困難であると言うことです。
厚生労働省の調査「重要事例情報の分析について」によれば、看護師の医療事故の原因として最も多かったものは、医療従事者間の連絡・伝達ミスでした。
この調査は、4カ月間にあった総件数446件のうち、有効な報告とされた370件をまとめたもので、「医療従事者間の連絡・伝達ミス」が32件(8.6%)を占めていました。
具体的には、「ドクターや看護師間の手書き指示の誤読」や、「伝達不十分」、「記載の誤り」があげられています。
ほかの理由として「手技的なミス」や「処置ミス」もありますが、予防しにくいインシデントの原因としては、人為的なものが大きく影響しているのです。
もちろん、どの医療機関でも事故予防のために業務マニュアルを作成し、さまざまな方法で二重・三重の予防策を実施しています。
それでも起きてしまうのがインシデントやアクシデントです。
ですからインシデントを起こしてしまったからと言って、「自分は看護師としてもうダメだ」と思う必要はありません。
事故防止への取り組みプロセス
- 正確な情報収集(事実関係の確認と把握)
- ケース分析(直接的・間接的要因の追求)
- 予防・改善策の立案(施設状況にあった再発防止策)
- 予防・改善策の実施(実施後の状況の把握と確認)
- 検証・評価(予防・改善策の妥当性・合理性の確認)
- 予防・改善策の改善の必要性チェック
の6段階に分けて、具体的にどのような行動がインシデント後の看護力をアップさせるのか考えてみました。
1.情報収集とケース分析は、正確な事故状況把握から始まる
インシデント当事者が最初にするべきことは、インシデントが起きた状況を正確に思い出し記録に残すことです(「事故防止への取り組みプロセス」1・2)。
インシデントがあった場合、事故当事者である看護師がインシデントレポートを作成するケースは少なくありません。
本来ならレポートの客観性を考えて、事故対策委員の看護師や、そのほかスタッフが当事者および周辺スタッフからの聞き取り調査をすべきです。
しかし、実際には事故の第一発見者や当事者がレポートを作成・提出することが多いのです。
もし自分がインシデントの当事者で、レポート作成や事故対策委員からのインタビューを受けることになったら、当時の状況を正確に思い出すことが大事です。
なぜなら正確な事実の把握が、事故の構造を明らかにすることにつながるからです。
事故レポートやインタビューの目的は、同じ医療事故・ミスが再発しないよう、予防・改善策を作ることです。
改善策を作るまでには
- 正確な情報収集
- 直接的・間接的な要因を探るためのケース分析
- 予防・改善策の立案
という流れが必要で、事故防止のポイントは、最初の正確な事実確認・把握にあると言って間違いないでしょう。
事故直後のインシデント当事者は、パニックになったり冷静な判断力に欠けていたりしますが、できる限り正確な状況報告を時系列に沿っておこないましょう。
インシデントを起こした本人でなければ気が付かないこともあるからです。
2.予防・改善策は第三者的な目線でおこない、職場全体で考える
インシデント当時の状況を正確に把握し、原因の追究ができたら、つぎは第三者的な立場から具体的な予防・改善策を考えます(「事故防止への取り組みプロセス」3)。
この時、事故の原因は1つではないことを頭にいれておきましょう。
重大なインシデントであっても、小さな原因が積み重なり、連鎖して起きた結果であることはとても多いのです。
ということは、時間軸と事故原因の因果関係を探っていけば、原因の連鎖を途中で断ち切ることができます。
そして、有効性の高い予防・改善策のためには、「インシデントを起こした当事者」プラス「職場全体」で対策を考えていくことが不可欠です。
たとえば、平成13年8月に、日本医師会「医療安全対策委員会」が出した「患者の安全を確保するための諸対策について」(PDF)にはこうあります。
患者さんの安全と満足のために「すべての職員が一丸となってそれぞれの立場から提案を行い、実践していくような組織風土を医療機関の中に作りあげていく必要がある。」
「すべての職員が一丸となって」という文言をあえて入れているのは、「医療機関は、職種と診療科で縦横に分断されているため、ともすれば連携が不十分になりがちである。」という懸念を、日本医師会としても持っているためでしょう。
インシデント当事者を含めて、職場の全員が、冷静に原因を追究し、予防・改善策を考えることで、当事者はもちろん職場全体の看護力アップにつながります。
3.予防・改善策は施設状況に合ったものか妥当性を確認
ここまできたら、あとはもう一息です。
立案された事故予防・改善策は、実施後に職場全体で妥当性や合理性の確認をしましょう(「事故防止への取り組みプロセス」4・5)。
同じようなインシデントであっても、医療機関によって患者さんの重症度が違いますし、配置されている人員の数や機材も違います。
他病院の予防・改善策は参考になりますが、あくまでもその病院の状況と合致したものでなければ、うまく機能しないのです。
さらに実施後は改善策の検証と評価をして、本来の目的どおりに働いているかどうかを、長期的な視点からチェックしていくことも必要です(「事故防止への取り組みプロセス」6)。
この段階に来るとインシデント当事者と病棟だけでカバーできる範囲ではなくなりますので、自然と病院全体の話になってくるでしょう。
自分を責めずに看護師力をアップ!無責のすすめに従おう
インシデント・アクシデントの再発を防ぐには、正確な状況報告が必要だ、と再三申し上げてきました。
しかし、自分のおこしたインシデントを繰り返し思い出すのは、看護師にとってつらいことです。
「インシデントを起こしたショックで看護師をやめたい」には、インシデント後の看護師の心理が的確に描かれています。
- 何でこんな単純なミスをしてしまったんだろう?
- もう少し気をつけていれば防げたのに
というところは、看護師なら思い当たることばかりです。
しかし記事にも書かれているように、自分を責めすぎることは看護力を上げることになりません。
辞めたいと思うのは、患者さんに対して責任をもっていたからこそ感じることで、逆にインシデントを起こして責任を感じないようなら、看護師として問題ありといえるでしょう。
インシデントの反省をするのは大事なことですが、反省を踏まえて次のステップに進むためには、いったん自分とインシデントを切り離して、距離を取ることも必要なのです。
反省と改善策の立案の両立が、患者さんへ反映される看護師力アップのコツ
インシデントを起こした看護師は、二度と同じミスを繰り返さないという気持ちを強く持たねばなりません。
しかし自分を強く責めすぎることは、けっしていい結果を生まない事も覚えておきましょう。
患者さんにむくいるためには、反省をしたあとに有効な予防・改善策を考えること。
これが看護師をレベルアップさせる方法ですし、最終的に患者さんに反映されてくることなのです。
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