[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師).more..]
男性看護師だって仕事を辞めたい!
「看護師は女性の仕事」という時代は、もう過去のこと。男性看護師の数はここ数年で着実に増えています。
看護協会の統計によると、2004年時点で男性看護師の数は3万1,594人だったのに対し、2014年には7万3,968人にもなっています。
10年間で2.34倍に増えているのです。
ただ、看護師は男女合計で114万2,319人いますので、男性看護師は看護師全体の約6.5%にしか過ぎません。
(出典:公益社団法人日本看護協会 「保健師、看護師、准看護師(男性、年次別・就業場所別)」 (PDF)、 「看護師・准看護師(年次別・就業場所別)」(PDF) )
男性看護師は、女性看護師のような結婚や出産を機に仕事を辞めることもありませんし、家庭や育児との両立で仕事を辞めたいと悩むこともほとんどありません。
しかし、「少数派だから」、そして「男性だから」という理由で、男性看護師も仕事を辞めたいと悩むことがあるんです。
男性看護師が仕事を辞めたい思う理由には、
1.女性が多い職場での人間関係
2.仕事の将来性、看護師という立場について
3.お給料について
4.設備面の不備
5. 女性患者からの拒否
このようなものがあります。男性看護師が仕事を辞めたいと思う理由とその解決法を順番に見てみましょう。
女性が多い職場での人間関係を解決するには?
そもそも男性看護師は、まず看護学校の段階で「女ばかりの中で、どう対応するか」を考えてきているはず。
学生からそのまま看護学校に来た男性はそれなりに応用が利くのですが、別業種からの転職組は既存の男性社会とのギャップに悩むようです。
女性”優位”は、どうしても女性が圧倒的に多い看護師である限り永遠に続くことになるでしょう。
同僚も部下も女性ばかり、上司に悩みを相談しても「女社会と分かって来たんだから、がんばりなさい」といわれると、立つ瀬がありませんね。
また、仕事をしていても、力仕事は自分から進んで協力しているのに、自分が受け持っている女性患者さんの排泄介助や入浴介助を同僚の女性看護師にお願いした時には、ため息をつれたり、あからさまに嫌な顔をされるということもあるようです。
女性社会の中でなかなか思うように仕事ができないという人は、少しでも男性看護師が多い職場を探しましょう。
たとえば、女性20人の職場に男性が1人だけというよりも、女性20人で男性3人のほうが、まだ働きやすいですし、精神的にも楽ですよね。
男性看護師が活躍している職場は、精神科や救命救急センター、ICU、小児科などです。
特に、大都市の大学病院や大きな総合病院だと、男性看護師はたくさんいますので、男性看護師が多いところへ転職したい場合は、都市部の大規模病院の精神科や救命救急センター、ICU、小児科を中心に探してみると良いでしょう。
看護師という立場についての悩みを解決するには?
看護師は男女を問わず長期的に安定して働ける職種です。
転職先には困りませんし、福利厚生面も悪くありません。しかし、それでも看護師をやめたくなる。
男性の場合は、微妙にプライドが関わっていますね。女性上司に注意される、年下のドクターから偉そうに指示出しされる場面などが精神的にきついようです。
こういうことが我慢できない場合は、訪問看護師になることも1つの解決法です。
訪問看護師は、訪問看護ステーションの中では女性が上司ということも多いですが、いったん仕事を始めてしまえば、患者さんの自宅を1人で周りますので、1人で気楽に働くことができます。
また、病棟やクリニックに比べるとドクターに接する機会も少ないですので、精神的に楽だと思います。
訪問看護は経験を積んで、自分で訪問看護ステーションを立ち上げて、看護師でも事業者=社長になることも可能ですので、男性看護師にとっては夢のある仕事と言えるかもしれません。
もう1つの解決法は、専門性を磨くことです。
年下のドクターからの指示を受けるのが苦痛というのはよくわかります。
でも、「なぜこの患者さんに、この指示が出るのか?」、「なぜこの薬を今使うのか?」などをきちんと理解している「仕事のできる看護師」には、ドクターも敬意を払って接してくれますので、指示受けをする時も嫌な思いをすることはないと思います。
具体的には、認定看護師や専門看護師の資格取得を目指したり、師長や看護部長など看護管理の道に進む良いでしょう。
看護師という立場で悩んでいるなら、訪問看護ステーションで働くか、専門性を磨いてキャリアアップをしましょう。
男性看護師の給料についての悩みを解決するには?
看護師の給料は一般的に高いと言われています。
看護師の平均年収は、厚生労働省の平成27年賃金構造基本統計調査によると、男性看護師で486万6,100円、女性看護師で477万4,900円となっています。看護師の場合は、男女の給料差がないんですよね。
【看護師の平均年収】
日本看護協会のデータで年収519万円というものがあるようですが、これは2012年(平成24年)のデータなので少し古いです。
また、人事院のデータから年収519万円という数字を出しているところもあるようですが、人事院は月収調査はしていても、年収調査はしていないとのこと。「519万円については確認出来ない」が公式見解です。
当サイトでは、毎年発表される厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の最新データから看護師の年収を計算しています。
国税庁の「平成26年分民間給与実態統計調査」(PDF)によると、一般サラリーマンの平均年収は男性で514万4000円、女性で272万2000円となります。
サラリーマンだと男女の給料差は約2倍にもなるんです。しかも、男性に限定してみると、看護師よりもサラリーマンの方が給料が高いんですね。さらに、サラリーマンに比べると、看護師は昇給額が少ないという現実もあります。
こういう給料事情があると、一家を支える大黒柱として収入面で不安が付きまといます。
この不安を解消するための方法は、積極的にキャリアアップしていくことです。
先ほども触れましたが、認定看護師や専門看護師のように自分の得意分野のプロフェッショナルとなっても良いですし、管理職として看護管理の道に進んでも良いでしょう。
認定看護師や専門看護師になれば、その分手当がついて給料は上がりますし、管理職になれば当然給料は上がりますよね。
ただ、看護師の世界は女性社会ですので、男性看護師が皆無の職場でのキャリアアップは正直難しいかもしれません。
特に、「看護師長が男性なんて!」と考えている病院もまだまだたくさんあります。
ですから、キャリアアップを決意するのと同時に、男性看護師が多く働いている都市部の大病院へ転職しましょう。
男性看護師が多い職場なら、能力があれば男性看護師でもきちんと評価してもらえる環境が整っています。
そして、何より大病院は給料が高いのです。
日本看護協会の「2013年 病院における看護職員需給状況調査」によると、勤続10年(31〜32歳、非管理職)の看護師の給料は、病床数が多くなればなるほど高くなっています。
病床数 |
勤続10年の看護師の平均給料 |
99床以下 | 30万8,960円 |
100〜199床 | 31万2,730円 |
200〜299床 | 31万6,728円 |
300〜399床 | 32万8,213円 |
400〜499床 | 33万1,976円 |
500床以上 | 34万4,004円 |
(出典:看護職の賃金水準データ(2013年版) | 日本看護協会)
見事に病床数と平均給料が比例しているのがわかると思います。
男性看護師は給料アップを狙うなら、大病院に転職して、キャリアアップを目指すと良いでしょう。
給料を上げたい男性看護師は、大病院に勤めて、キャリアアップしましょう。
設備面の不備を解決するには?
たかが設備面というなかれ。男性看護師を初めて受け入れる病院だと、更衣室が物品管理室の一隅ということもあります。
トイレも同様ですね。夜勤に入らなくてはいけないのに、仮眠室がないということもあります。
男性看護師を受け入れるのが初めてというのであれば、きちんとした更衣室や仮眠室がないというのも仕方ないかもしれません。
でも、入職後何ヶ月もたつのに、改善されることもなく肩身が狭く不便な思いをしているのであれば、スパッと辞めて転職するのも1つの解決法です。
もちろん、転職する時は転職先に男性用の更衣室や仮眠室があるのかをきちんと確認してくださいね。できれば、男性看護師を採用した実績がある病院が良いと思います。
女性患者からの拒否を解決するには?
女性看護師が男性患者から性別を理由にケアを断られることはありません。でも、男性看護師は「男性だから」という理由で女性患者にケアを拒否されることがあります。
これは、仕方がないことです。男性看護師に身体を拭いてもらったり、排せつ介助をしてもらったりすることを恥ずかしく思うのは、女性としては当たり前の感情だからです。
でも、拒否された男性看護師は頭では仕方がないことと分っていても、「こっちは全然気にしないし、仕事だから関係ないのに」と思って傷つきますよね。
また、同僚の女性看護師に、事情を話して代わりにやってもらわなくてはいけないことも心苦しくなります。
代わりにやってもらうことをお願いした時に、気持ちよく「OK、わかったよ。その代り、この仕事やっておいてくれる?」と言われたら、まだ気分は落ち込まないと思います。
でも、ため息をつきながら、「また?もういい加減にしてよ。こっちだって忙しいのに。これだから男の看護師は使えないのよ。」なんて言われたら、看護師の仕事を続けたくなくなってしまいますよね。
そういう場合は、意識がない患者さんが多いところ、もしくは性別の差がない職場に転職してはいかがでしょうか?具体的には、オペ室やICU、救命救急センター、小児科です。
オペ室はオペ中は全身麻酔をかけることが多いので、手術中は意識がなく、男性であるからといって、拒否されることはありません。
ICUや救命救急センターでは意識がない患者さんが多いですし、患者さんは命の危機に瀕していますので、「恥ずかしい」と思うどころではないのです。
小児科は患者が子供なので、思春期前の子供の場合は、男性だからといってケアを拒否することはありません。
ですから、看護師としての仕事をする上で、男性であるために仕事が上手く進まない、患者さんにケアを拒否されるという場合は、性別を意識せずに働けるオペ室やICU、救命救急センター、小児科に転職すると良いでしょう。
女性の患者さんにケアを拒否されるのがストレスなら、オペ室やICU、救命救急センター、小児科で働くことをおすすめします。
男性看護師が悩みを解決しやすい職場のまとめ
男性看護師が悩みを解決しやすい職場を、ここでもう一度確認しておきましょう。
男性看護師が働きやすい職場は大病院です。特に、大学病院のような最先端の医療を行っている急性期病院が良いでしょう。
大病院なら男性看護師の割合が高いですし、給料も高めです。
また、資格取得支援制度がありますので、キャリアアップする時には病院からの支援を受けることができます。
そして、大病院の中でもICUや救命救急センター、オペ室、小児科、精神科は男性看護師の割合が特に高いですので、これらの職場・診療科を中心に転職先を探してみると良いと思います。
しかも、男性看護師が多い病院では「男性看護師会」と呼ばれるような男性看護師のサークルがあって、月に1回など定期的に飲み会・交流会が開かれていますので、男性看護師ならではの悩みを相談したり、分かち合ったりできますので、働きやすいと思います。
もし、転職先の病院に男性看護師会がなかった場合は、「全国男性看護師会(https://www.samurainurse.com/)」や「日本男性看護師会(http://nursemen.net/)」などに参加して見てはいかがでしょうか?
このような男性看護師会に参加すると、全国の男性看護師と交流することが出来ますので、悩みを分かち合えて、また前向きに働くことができるはずです。
女性社会の中で働く男性看護師は、悩みが尽きないと思いますが、じっくり職場を選んで転職すれば、ある程度その悩みは解決するはずです。転職を成功させるためには転職支援サイトを使うことをおすすめします。担当コンサルタントに、あなたの希望や譲れないこと、こだわりポイントを伝えて、あなたにぴったりの職場を探してもらいましょう。
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